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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第83章 幕間その伍:紡ぎ歌(栗花落カナヲ編)


そしてようやく仕事がひと段落した後、汐はカナヲに向き合い持ってきたラムネを手渡した。

「これ、あげる。それと、昨日は驚かしてごめんなさい」

汐はそう言って頭を下げると、カナヲは困ったように目を泳がせた。そして懐から銅貨を取り出そうとして、手を止めた。

カナヲの頭の中に、一つの言葉がよみがえる。

(心のままに)

カナヲは銅貨を取り出そうとした手を引っ込め、汐の手からラムネを受け取った。そして小さく「ありがとう、大丈夫」と答えた。
それを聞いた汐が今度は驚いた表情でカナヲを見つめた。銅貨で決めなかったことと、礼を言われたことに驚くと同時に嬉しさがこみ上げてきた。

ところがその時、不意に汐の鼻の頭に雫が一つ落ちてきた。かと思うと、雨粒はたちまち増え瞬く間に激しく振り始めた。

「わあ、降ってきた。カナヲ、早く!」

汐は思わずカナヲの手を取ると、そのまま屋敷の中へ転がるようにして入った。幸いずぶ濡れは免れたが、この雨では汐の家までは戻れそうにない。

「思ったより早く降られちゃったわ。ごめん、少しだけ雨宿りさせてくれる?」
「え、う、うん」

カナヲは戸惑いながらうなずくと、汐は「ありがとう」とだけ小さく言って二人で縁側に座った。

辺りには雨が降る音だけが響き、カナヲは勿論汐も特に話題が思い浮かばず居心地の悪い沈黙が続く。
時折、炭治郎達はどうしているか尋ねても、曖昧な返事をされるだけだ。

(やっぱり嫌われてるのかな、あたし。まあ、気に食わない奴には我慢できなくなるし、それがあたしの短所だってのはわかっているはずなんだけどね)

はあと小さくため息をつけば、灰色の空が目に入りさらに気が滅入る。すると、カナヲはそんな汐を見ながらおずおずと声をかけた。
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