第83章 幕間その伍:紡ぎ歌(栗花落カナヲ編)
甘露寺は急に黙ってしまった汐に、どこか体調が悪いのかと尋ねると、汐は慌てて首を横に振った。
そして彼女に、今日の昼間にあったことを話した。
「成程ね。しおちゃんの言う通り、カナヲちゃんはいきなり声をかけられてびっくりしただけで、しおちゃんを嫌ったわけじゃないと思うわ。でも、カナヲちゃんの隊服を汚しちゃったのは事実だから、明日謝りに行ってきたほうがいいわね」
「そうする。でも、手ぶらで謝りに行くのも失礼だし、何かカナヲに持っていった方がいいわよね。何がいいかな」
「そう言えば、前にしのぶちゃんのお屋敷に遊びに行った時に、ラムネをおいしそうに飲んでいたのを見たわ」
汐が首をひねりながらそう言うと、甘露寺は思い出したように手を叩きながら言った。
「ラムネかぁ。確か町に行けば売ってたかな。明日買ってから蝶屋敷に行ってみる。ありがとう、みっちゃん」
汐の決心した表情を見て、甘露寺は思わず顔をほころばせるのだった。