第10章 慈しみと殺意の間<肆>
― そらにとびかう みずしぶき
ゆらりゆれるは なみのあや
いそしぎないて よびかうは
よいのやみよに いさななく
ああうたえ ああふるえ
おもひつつむは みずのあわ ―
あの日には今は亡き者たちへ向けられた寂しさを孕んだ歌が、今は炭治郎をはじめ森のどこかにいる彼らに向かって歌われる。その歌は切なさのほかにも、僅かな希望を宿したものになっていた。
そんな歌を、炭治郎は目を閉じて耳を傾ける。心に染み渡る、優しい彼女の歌声。そして彼女の優しい匂い。
そんな二人の背中を、鱗滝はそっと見つめていた。