第81章 幕間その伍:柱だヨ!全員集合?(後編)
「ここが伊黒さんのお家ね。外では時々あったり、文通もしているけれど、お家に来るのは初めてなの」
「え、そうなの?っていうか文通してるって・・・」
心なしか伊黒の話をする甘露寺の眼は、他の柱には無い何かを宿していた。それが何なのかはこの時点の汐にはわからなかった。
「こんにちは、伊黒さん。甘露寺です!いらっしゃいますか?」
甘露寺が声をかけると、間髪入れずに伊黒が屋敷から出てきた。その速さに驚く汐をしり目に、甘露寺はにこやかな笑顔で言った。
「今日は汐ちゃんと柱の皆さんにご挨拶に来たんです。私の大切な継子を、伊黒さんにもきちんと紹介したくて」
甘露寺が尋ねてきたことに嬉しさを宿した伊黒の眼が、汐に映った瞬間あからさまに目の色が文字通り変った。
その眼は明らかに疑いと怒りと嫉妬心が宿っていた。
「甘露寺の継子になったという話は耳にしていたが、まさかお前とは。何故お前のような者が甘露寺の継子になれた。甘露寺に恥をかかせるような体たらくなら絶対に許さん」
相も変わらずネチネチとした物言いに、汐は思わず顔を引き攣らせた。そんな彼女の態度が気に障ったのか、伊黒は更に視線を鋭くさせる。
しかし汐も師匠である甘露寺に恥をかかせないようにと、引き攣る顔を何とか戻そうとしながらも、伊黒に挨拶をしようと手を伸ばした、その時だった。
手の甲に小さな衝撃を感じて汐が視線を動かすと、そこには伊黒の相棒の蛇、鏑丸が汐の手の甲に牙を突き立てているのが目に入った。