第79章 幕間その伍:合縁奇縁
それから汐は名残惜しまれながらも蝶屋敷を後にし、彼女の師範となる甘露寺蜜璃の屋敷へとやってきた。
「いらっしゃい、汐ちゃん。ようこそ、私の屋敷へ!」
甘露寺は嬉しそうにそう言うと、すぐさま汐に荷物を置き訓練場へを案内した。
「改めて、あなたへ稽古をつけることになった恋柱・甘露寺蜜璃です。さて、さっそくで申し訳ないのだけれど、あなたにはまずやってもらいたいことがあります」
いきなりの事に汐は驚いたものの、これも強くなるための一歩だということを胸に刻み、甘露寺の次の言葉を待った。
「そのやってもらいたいこととは・・・」
「・・・・」
「・・・・お引越しよ!!」
「・・・へ?」
甘露寺の思わぬ言葉に、汐の口から素っ頓狂な声が漏れた。それに構わず甘露寺はつづけた。
「荷物はもう運び込んであるから、後は住むだけよ。さあ、早速行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待って!いや、待ってください!!」
しかし汐の制止も聞かず、甘露寺は使用人に後のことを頼むと、半ば汐を引きずるようにして連れ出した。
その強引さに汐は何も言うことができず、ただ黙って彼女に従うのだった。