第79章 幕間その伍:合縁奇縁
「ついたわよ!ここが今日からあなたが住む家。中々素敵でしょう?」
「いや素敵でしょうって、これ、どう見ても豪邸・・・」
汐の目の前に広がるのは、甘露寺邸ほどではないがそこそこの大きな屋敷だった。
しかもその場所は、あろうことか蝶屋敷からそれ程離れていないところにあった。
汐があんぐりと口を開けていると、甘露寺は意気揚々と説明を始めた。
本当は汐が甘露寺邸に住み込んで稽古をつけてもらうのがいいのだが、汐が炭治郎達と離れることをよくないと思った彼女が、汐の為に別邸を用意したということだった。
勿論、当主である産屋敷輝哉の許可もすでにとってあるという。
その話の速さに汐は考えることを放棄し、目の前に立つ屋敷を見据えた。が、あることを思い出し、汐は甘露寺に問いかけた。
「あのさ、甘露寺さん。実を言うとあたし、片付けがものすごく苦手なの。だからこんな屋敷をもらっても、たぶん綺麗にはできない。炭治郎と一緒にいた時にも、いつも叱られながら掃除してたし・・・」
「それなら大丈夫よ。使用人の人を派遣するし、私も時々ここに泊まって掃除を手伝うわ。あ、なんなら、炭治郎君を呼んで一緒に住んでもらうとか」
「い、いやいやいやいや!!それは駄目!それだけは絶対にダメ!!!」
しかし汐がいくら喚こうが、話は引き返せない程に進んでしまっており、結局汐はその屋敷に住むことになった。
そして、事情を知った炭治郎達と気まずい再会をすることになるのは、言うまでもなかった。