第79章 幕間その伍:合縁奇縁
「ちょっとちょっと、大げさじゃない?今生の別れってわけじゃあないし、ここから甘露寺さんの屋敷までは近くはないけど遠くは無いし、それに任務でだって会うことはあるし」
それにね、と汐はしどろもどろになりながらも続けた。
「離れていたってあたしたちの縁は切れるわけじゃないわ。あんた言ってくれたじゃない。那田蜘蛛山で。絆は誰にも引き裂けないって。なら、これぐらいで切れるほど安っぽいものじゃないでしょ?」
汐はそう言って炭治郎を見つめると、彼は驚いたように目を見開き、それから安心したように笑った。
「そうだな。汐の言う通りだ。俺、少しだけ混乱していたみたいだ。ごめん」
「謝ることじゃないわよ。あんたが悪いんじゃないし。それにあたしも、そうよ。あんたと離れて暮らすことになるって聞いたとき、正直寂しくなった。あんたがいることが当たり前だって思ってたから。だから、あんたもあたしと同じ気持ちだったことが、少しだけ嬉しい」
汐は微笑みながら言うと、炭治郎の顔も自然と笑顔になり、彼の目に宿っていた寂しさはなりを潜めていた。
「あ、そうだ。手紙を書くわ。あの時は失敗して渡せなかったけれど、今度はきちんと書いて出す。それに、そうね・・・。あんたさえよければ日にちを決めて会わない?稽古をするのもよし、どこかへ行くのもよし。それくらいなら甘露寺さんも許してくれると思うけれど・・・」
「それはいいな。じゃあ俺も手紙を書くよ。毎日」
「・・・あんたなら本当に毎日書きそうね・・・」
そんなことを話しながら、二人の夜はゆっくり更けていくのだった。