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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第79章 幕間その伍:合縁奇縁


汐の姿が見えなくなった後、善逸は徐に炭治郎の方を向いて口を開いた。

「あ~あ。これからは汐ちゃんの歌が聴けなくなるのか。なんだか寂しいな」
「なんでだ?汐の歌なら頼めばいくらでも聴かせてくれるだろ?」

何を言っているんだと言いたげな炭治郎に、善逸は目を少し見開いた後大きくため息をついた。

「お前さ。これから先汐ちゃんと簡単に会えなくなるっていうのに、寂しくないのか?」
「会えなくなる?どうして?」
「どうしてってお前、本気でわからないのか?継子になるっていうことは、育ててくれる柱と寝食を共にするってことなんだ。だから汐ちゃんはここを出て恋柱の屋敷で暮らすんだよ」

善逸がそう説明すると、炭治郎は驚いた顔で彼を見つめた。その反応からするに、汐が蝶屋敷を出ることに本当に気づいてなかった様だ。

「汐と・・・毎日会えなくなる・・・」

先ほどまでの笑顔が急にしぼんでいく炭治郎に、善逸は自分が失言をしたことを少なからず感じるのだった。

その夜は、汐が継子になった祝いと送別会を兼ねた宴が開かれた。前にも祝いの宴は開かれたことがあったが、今回は汐が主役とあってか彼女の好きな海の幸の料理までが並べられた。

伊之助は初めて見る料理に興味津々で、汐をほったらかして真っ先に手を付けたため、彼女に吹き飛ばされたりといつもの光景が広がった。

しかし汐はあの時とは明らかに違う、異変を感じていた。心なしか炭治郎の様子がおかしいように見えた。

一番喜んでくれていた人のはずなのに、その眼には嬉しさがあまり宿っておらず、寂しさと悲しみが混じっているように見えた。

それが気になり、せっかくの好物の味もろくにわからなくなってしまっていた。

炭治郎に話しかけようとしても、伊之助が暴れまり、それをアオイが諫めたりして騒がしかったため、汐はなかなか炭治郎に話しかけることができないでいた。

そして結局、宴の間は一度も炭治郎と話ができないまま終わってしまった。
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