第79章 幕間その伍:合縁奇縁
「えええーーーッ!!!」
蝶屋敷中が揺れそうなほどの大声で、炭治郎、善逸、伊之助の三人は目を向いて汐に詰め寄った。
「継子!?継子ってあれだよな!?カナヲみたいなやつだよな!?すごいじゃないか汐!」
興奮して言葉を捲し立てる炭治郎に、汐は初めてその話が出た時の自分と同じ反応なことに共感した。
「しかも恋柱って、あのボンキュッボンの人だよね!?そんなすごい人の弟子になるなんてうらやま・・・すごいよ汐ちゃん!!」
善逸に至っては着眼点がずれているだけでなく、彼の邪な本能が顔を出している始末だ。
「・・・ツグコってなんだ?」
一方伊之助は継子の事すら知らず、善逸は継子とは柱が直々に指導し、育てる隊士のことであり、慣れるのは相当な才能の持ち主であることを説明した。
それを聞いた伊之助は、鼻息を荒くしながら汐を見た。
「話自体は結構前から出ていたんだけれど、その時はまだ全集中・常中を覚えていない段階だったから保留にしてたの。でも、今回の――、煉獄さんの件で迷っている場合じゃないってわかった。失ってからわかるんじゃ遅すぎる。だから、この話を受け入れることにしたの」
そう言って彼らを見据える汐からは、決意の匂いと音と気配がした。それを感じ取った三人の身体が震え、鳥肌が立った。
煉獄杏寿郎。元炎柱で、上弦の参との戦いで殉職した誇り高き剣士。彼の死は四人の心に影を落としたが、彼の遺した言葉は四人に新たな決意も抱かせた。
その決意の一つが、汐が柱の継子になるということだった。
「そうか。それが汐が出した答えなんだな」
「うん」
「そうか。じゃあ俺たちも負けていられないな。善逸、伊之助!」
炭治郎の言葉に伊之助は「おうよ!」と力強く返事をしたが、善逸は少し迷いのある表情を見せた。それを見た汐がどうしたのか尋ねようとした時だった。
「あ、汐さん!しのぶ様がお呼びですよ」
屋敷の奥からすみが転がるように走ってきて、汐に声をかけた。汐は返事をすると三人に「またあとでね」といってその場を去った。