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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第77章 誇り高き者へ<肆>


「あなたのことはよく兄から聞かされていました。素晴らしい歌声を持つ、青髪の女性だと。柱合会議から戻って来た兄は、いつもその話ばかりしていました」
「そ、そうだったの。何だか照れるわ」

心にこそばゆさを感じ、汐が顔を伏せると、千寿郎は突然頭を下げた。

「ありがとうございます、大海原さん。兄の願いをかなえてくれて」
「願い?」
「兄はあなたの歌をずっと聴きたがっていたんです。任務に行く数日前に、素晴らしいものを見たと興奮した様子で話してくれて、もう一度あの歌を聴きたいとずっと言っていたんです」

そう言って顔を上げた千寿郎の目には涙がたまっていた。それを見た汐も目頭が熱くなり、思わず胸元を握った。
その時、炭治郎が戻ってきて汐が目が覚めていることに気づき、駆け寄ってきた。炭治郎は無茶をするなと汐を諫め、そんな彼を汐が諫める。

そのやり取りを見て、千寿郎は微かにほほ笑んだ。

「兄には継子が居ませんでした。本当なら私が継子となり、柱の控えとして実績を積まなければならなかった。でも、私の日輪刀は色が変わりませんでした。ある程度の剣術を身につけないと日輪刀の色は変わらないものですが、どれだけ稽古をつけてもらっても、私は駄目だった。剣士になるのは諦めます」

そう言って俯き涙をこぼす千寿郎を、汐と炭治郎は沈痛な面持ちで見ていた。

「それ以外の形で人の役に立てることをします。炎柱の継承は断たれ長い歴史に傷がつきますが、兄はきっと許してくれる」
「そうね。煉獄さんならきっと許してくれるわ。最後の最後まで、あんたたち家族を思っていた人だもの」
「正しいと思う道を進んでください。千寿郎さんを悪く言う言う人がいたら、俺が頭突きします」

炭治郎の言葉に千寿郎は「それはやめた方がいいです」と若干顔を引き攣らせながら言った。

「だったらあたしが吹き飛ばして・・・」
「それはもっとやめた方がいいです。というよりやめてください」

先程よりも強めの制止に、汐は思わず口を閉じた。
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