第77章 誇り高き者へ<肆>
「あまりにも酷い言い草だ。そんな風に言うのはやめてください」
「なんだお前は。出て行け、家の敷居をまたぐな・・・」
炭治郎の言葉に槇寿郎は視線を千寿郎から炭治郎へと移した。が、彼の目が炭治郎の耳飾りを捕らえた瞬間。目を見開き、持っていた酒瓶を落とした。
粉々に砕け、漏れ出す中身にもお構いなしに、彼は震える指で炭治郎を指さした。
「お前・・・そうか、お前・・・“日の呼吸”の使い手だな!そうだろう!!」
「「日の呼吸?」」
槇寿郎の言葉に、汐と炭治郎は同時に声を重ねた。確か炭治郎が使うのは、水の呼吸とヒノカミ神楽ではなかったのか?
何のことかと聞く前に、槇寿郎は一瞬で炭治郎との距離を詰めそのまま炭治郎を地面に組み敷いた。
「ちょっ!何やってんのよあんた!!炭治郎は怪我をしてるのよ!?離しなさいよッ!!」
「父上やめてください!!その人の言っていることは本当です!具合が悪いんですよ!!」
汐と千寿郎は必死に槇寿郎を引きはがそうとするが、彼は「うるさい、黙れ!」と叫び千寿郎を殴り飛ばした。
それを見た汐の中で、怒りの炎が燃え上がった。
「いい加減にしろやボケェ!!黙って聞いてりゃ、死んだ息子を罵倒するばかりかもう一人の息子まで殴って、それが父親のする事かこの野郎!!恥を知れ!!」
汐はそのまま槇寿郎の顔面に左拳を思い切り叩きつけた。だが、彼はそのまま汐の腕を掴むと思い切り壁に叩きつけた。
全身い衝撃が走り、口から血があふれ出る。それを見た炭治郎は、渾身の力で槇寿郎を振りほどき、その拳を叩きつけた。
「汐に何をするんだ!!」
そのまま座り込んでいる汐を庇うように立ちながら、炭治郎は思い切り怒鳴りつけた。
「さっきから一体何なんだあんたは!汐の言う通り、命を落とした我が子を侮辱して!殴って!何がしたいんだ!」
「お前、俺のことを馬鹿にしているだろう」
「わけわかんないことを言ってんじゃねーわよ!!大体炭治郎がいつあんたを馬鹿にしたのよ!?」
汐も我慢ができずに怒鳴りつけると、槇寿郎は怒りに顔を歪ませながら炭治郎の耳飾りを指さした。