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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第76章 誇り高き者へ<参>


「・・・・」

煉獄が眠ったと同時に、汐の歌も止まった。あたりには再び静寂が訪れる。

そこへ善逸が禰豆子の入った箱を背負いながら駆け付けた。彼も負傷していたのか、頭にうっすらと血の跡があった。

善逸は先ほどの戦いを音で聴いていたためか、何があったかはある程度把握しているようだった。

「汽車が脱線する時・・・煉獄さんがいっぱい技を出しててさ、車両の被害を最小限にとどめてくれたんだよな。」
「そうだろうな」
「死んじゃうなんて、そんな・・・ほんとに上弦の鬼、来たのか?」
「うん」
善逸の言葉に、炭治郎は短く答える。

「なんで来んだよ上弦なんか・・・そんな強いの?そんなさぁ」
「・・・うん」

膝の上で拳を作り、炭治郎は声を震わせた。

「悔しいなぁ。何か一つ出来るようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ。凄い人は、もっとずっと先の所で戦ってるのに、俺はまだそこに行けない。こんなところで躓いている俺は・・・煉獄さんみたいになれるのかなぁ・・・」

俯き涙を流す炭治郎に、善逸の目からも大粒の涙があふれ出し、彼はそれを必死にぬぐった。だが、そんな空気を壊すような大声が辺りに響いた。

「弱気なこと言ってんじゃねぇ!」

全員が振り返ると、そこには全身を震わせながら伊之助が佇んでいた。

「なれるかなれねぇかなんて下らねぇこと言うんじゃねぇ!信じると言われたら、それに応えること以外考えんじゃねぇ!死んだ生き物は土に還るだけなんだよ!べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ!悔しくても泣くんじゃねぇ!」

そう叫ぶ伊之助の被り物からは、滝のように涙が流れていた。それを善逸が指摘し、そんな善逸に伊之助は頭突きをかます。
そしてそのまま伊之助は刀を振り回し、叫びながら暴れ出した。まるで、悲しみを振り払うように。

事後処理を行う隠達が到着するまで、それはつづけられた。
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