第76章 誇り高き者へ<参>
「クソッタレェエエエ!!!ふざけてんじゃねぇええ!!戻ってきやがれ腑抜け野郎!!!」
そしてそれに合わせるように、炭治郎も大声で叫んだ。
「逃げるな卑怯者!!逃げるなぁ!!」
二人から浴びせられた罵倒に、猗窩座は青筋を立てながら思わず立ち止まりそうになった。
(何を言ってるんだあのガキ共は。脳味噌が頭に詰まってないのか? 俺は鬼殺隊(おまえら)から逃げてるんじゃない。太陽から逃げてるんだ!それにもう勝負はついてるだろうが!アイツは間も無く力尽きて死ぬ!!)
「いつだって鬼殺隊は、お前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだ!!生身の人間がだ!!傷だって簡単に塞がらない!!失った手足が戻ることもない!!逃げるな馬鹿野郎!!馬鹿野郎!!卑怯者!!」
いつもの炭治郎なら絶対に口にしない言葉で、彼はひたすら猗窩座を罵った。それを受け、汐も負けじとその背中に罵声を浴びせる。
「テメエなんざ煉獄さんの足元にも及ばない!!煉獄さんの強さを踏みにじるな!!侮辱するな臆病者!!」
「お前なんかより、煉獄さんの方がずっと凄いんだ!!強いんだ!!煉獄さんは負けてない!!誰も死なせなかった!!戦い抜いた!!守り抜いた!!お前の負けだ、煉獄さんの勝ちだ!!」
炭治郎は両目から大粒の涙を流しながら、声が彼果てるまで叫び続けた。汐も煉獄の羽織を掴みながら、唇が切れる程かみしめる。
「だめだ、大海原少女。それ以上は体に障る。それに、女性があのような乱暴な言葉を使うものじゃない。素晴らしい声が台無しだぞ」
煉獄は汐に慈しみのこもった視線を汐に向けると、泣きじゃくる炭治郎に顔を向けた。
「竈門少年もそんなに叫ぶんじゃない。腹の傷が開く。君も軽傷じゃないんだ。君達が死んでしまったら俺の負けになってしまうぞ」
炭治郎は涙にぬれた顔を煉獄に向けると、彼は微笑みながら手招きをした。