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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第74章 誇り高き者へ<壱>


乗客たちは傷を負っているものの、誰一人として命を落としたものはいなかった。これも皆が必死で鬼から彼らを守ってくれた賜物だろう。

煉獄はそれを確認すると、汐を抱えたまま壊れた列車から外に出た。

月の明かりが辺りを照らしているため、視界は悪くない。煉獄が辺りを見回すと、少し前方に倒れている炭治郎の姿が見えた。

胸が上下していることから、彼が生きていることがうかがえる。煉獄はそのまま炭治郎に近づき、その顔を覗き込んだ。

「君も全集中の常中が出来るようだな、感心感心!」
「煉獄さん・・・」
「常中は柱への第一歩だからな!柱までは一万歩あるかもしれないがな!」
「頑張ります・・・」

煉獄の顔を認識した炭治郎の眼に光が戻る。だが、彼が抱えている汐の姿を見た瞬間、弾かれるように起き上がろうとした。

しかし腹部の傷の痛みが炭治郎の身体を地面に引き戻す。それでも汐の安否が気になり、痛みをこらえて起きようとした。

煉獄はそっと汐を地面に寝かせると、炭治郎を見据えながら言葉を紡いだ。

「気を失っているが、彼女は無事だ」
「で、でも、汐から血の匂いが・・・」
「君の方こそ、腹部から出血している。まずは自分のことに集中しろ。もっと集中して呼吸の精度をあげるんだ。彼女と同じように、体の隅々まで神経を行き渡らせろ」

破れた血管を探し当てた炭治郎は、歯を食いしばって痛みに耐える。そんな彼に煉獄は人差し指を額に当て、静かに言った。

「集中」

そのまま炭治郎も汐と同様に血管を圧迫させ止血する。苦しげに息をつく彼を、煉獄はうれしそうに見つめた。

「うむ、君も止血できたな。大海原少女にも言ったが、呼吸を極めれば、様々なことができるようになる。何でも出来るわけではないが、昨日の自分より、確実に強い自分になれるんだ。君も、彼女も」

煉獄はにっこりと笑い、乗客が全員無事であることを告げる。その言葉に炭治郎の眼が輝きを増し、星空が映った。

(汐・・・お前も無事でよかった・・・)

炭治郎が安堵の溜息をついたその時

凄まじい衝撃と音がすぐ後ろで轟き、あたりに波紋のように広がった。
二人が何事かと思い支線を動かすと、そこから土煙がもうもうと上がっている。

そして土煙が晴れたその場所にいたのは。

全身に藍色の線状の文様を浮かばれた、筋肉質の青年のような鬼だった。
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