第73章 狂気の目覚め<肆>
汐を奥へ放り込んだ後、煉獄は彼女が戻って来た時の為に退路を確保せんと肉片に向かって構えると、大きく息を吸った。
炎の呼吸 肆ノ型
盛炎のうねり!!
煉獄を中心に、渦巻く炎のような剣技がまとわりつく肉片を一瞬で吹き飛ばし、さらに速く細かい斬撃が壁中に食い込み血の雨を降らした。
その攻撃の重さと多さに、流石の鬼も再生に時間がかかるのか先ほどより肉片の動きがかなり鈍くなっていた。
(さて。早く大海原少女と合流せねば!!)
煉獄は閉ざされていた扉をあけ放ち、その先へ進もうと足を踏み出したその時だった。
悍ましい程の殺気が、刃のように煉獄の身体を突き刺し思わず彼は目を見開いた。夢を見せた鬼ではないことが、瞬時にわかるほどの気配。
柱である自分ですら怖気を感じるその気配の中、汐をこの先に行かせたことに煉獄は心の底から後悔した。
(迂闊だった。まさかこの列車内に新たな鬼が居ようとはっ・・・!不甲斐なし!)
だが、後悔している時間などない。早く駆け付けねば汐の命が危ないことは明確であり、何より彼女を死なせてしまっては絶対にならないと煉獄の第六感はうるさいくらいの警報を鳴らしていた。
(無事でいてくれ・・・、大海原少女!!)
煉獄はすぐさま、床を蹴り飛ぶように前に進んだ。彼女は、絶対に死なせてはならない。例え、己の身がどうなろうとも――