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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第71章 狂気の目覚め<弐>


魘夢は本当は幸せな夢を見せた後に悪夢を見せることが好きだった。人間の歪んだ顔が好きで好きで堪らなく、不幸に打ちひしがれて苦しみ、もがいている者を見るととても心地よかった。

しかし彼は用心深く、鬼狩りは回りくどい真似をしても確実に殺すつもりでいた。自身の血を混ぜた洋墨(インク)で作った切符を切らせることで発動する血鬼術。

少々面倒だが気づかれにくく、気づかれずに仕留めるにはうってつけだった。

しかし、目の前にいる二人は夢だと気づき、短時間で覚醒法も見破った。幸せな夢や都合のいい夢を見たいという欲求はすさまじいというのに。

そして魘夢は、もう一つ気づいた。目の前にいる二人の人間。一人は耳に飾りを付けた鬼狩りと、もう一人は青い髪の少女の鬼狩り。

そして、その青い髪の少女こそが、自分が今興味を持った初めての人間だということに。

(運がいいなぁ。早速来たんだ、俺のところに。夢みたいだ。二人を殺せばもっと血を戴けるうえに、あの娘の小間物のような悍ましい心を自覚させてあげられる)

そんな彼の心中など気づくこともなく、二人は怒りを宿しながら静かに刀を抜いた。

「人の心に土足で踏み入るな。俺たちはお前を許さない」

炭治郎の言葉に魘夢は口元を歪ませ笑うと、炭治郎には目もくれず隣にいる汐に目を向けた。

「初めまして、青い髪のお嬢さん。俺は魘夢。君に会えて本当にうれしいよ」
「あんたみたいな変態糞野郎にうれしいって言われても、あたしはこれっぽっちも嬉しくないわ」

汐が吐き捨てるように言うと、魘夢は心外だといわんばかりに大げさに両手を振った。

「まあそう言わないでよ。俺はね、君の夢を覗いたとき感動したんだよ。これほどまでに素晴らしく、これほどまでに狂った心を持つ人間に出会ったことがなかったからね」
「汐、聞いちゃだめだ」

魘夢のねっとりとした声を遮るように、炭治郎の声が飛ぶ。しかし魘夢はそれでもなお、嬉しそうにつづけた。
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