第70章 狂気の目覚め<壱>
「あああああああああああああ!!!!!」
悲鳴に近い声と共に、汐は目を開けた。体中から汗が拭き出し、心臓は早鐘のように打ち鳴らされている。
しかし、眼前に広がる景色は、先ほどまでも村ではなく、列車のようだ。
汐はすぐさま、自分の頸に手を当てる。血も傷も一切なく、生きていることを確信する。
(やった・・・目が覚めれたわ・・・本当に、吐き気がするほど悪趣味な奴)
「うーーー」
傍らで小さな声が聞こえて顔を動かすと、汐の大声で驚いたのか、怯えた様子の禰豆子が隠れながらこちらを見ていた。
「禰豆子!?」
汐が禰豆子の名を呼ぶと、禰豆子は安心したのかぴょんと飛び跳ね汐に抱き着く。額にはもう塞がってい入るものの、血が流れた後があった。
「禰豆子ありがとう!あんたのお陰で助かったわ。他に怪我はしていない?変な事されてない?」
汐は慌てて禰豆子の身体をまさぐると、禰豆子はくすぐったいのか身体をよじって汐から逃れた。
「大丈夫そうね。それより、これはいったいどういう状況なの?」
目の前には少女の首を絞めたまま動かない煉獄と、のんきに鼻提灯を出して寝ている善逸と伊之助。そして煉獄の隣には――
「炭治郎!炭治郎起きて!!目を覚ますのよ!!あんた達もいつまでも寝腐ってんじゃないわよ!!」
汐は炭治郎を起こそうと身体を動かしたとき、ふと自分の手に縄のようなものが結ばれていることに気づいた。
だがそれは途中で焼ききれ、少し焦げ付いた匂いがしていた。
そして、少しだが鬼の気配がする。
(もしかして、これが夢のからくり。鬼の血鬼術・・・?だとしたら・・・)
汐が考えをまとめようとしたその時だった。