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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第68章 無限列車<参>


「しっかし驚いたぜ。まさかお前があんなふうに泣くなんてなァ。お前年いくつだよ」

ようやく落ち着きを取り戻した汐は、獲ってきたものを調理して食卓に並べた。
いつもと変わらない、玄海と二人きりの食卓。あの時と何も変わらない、幸せな日常。

「アハハ、ごめんねおやっさん。何だかあたし、ずっと悪い夢でも見てたみたい」
「はあ?まさか俺が死ぬ夢だとか、そんなことじゃねえよな。俺が死ぬのは別嬪の上と決めて――」
「止めてよ食事中にそんな下品なこと言うの。本当におやっさんは相変わらずなんだから」

そう言って汐はけらけらと笑いながら、雲丹の刺身に手を伸ばす。すると、それを見ていた玄海がぽつりと言った。

「なあ汐。お前、好きな野郎はいねぇのか?」
「ブフゥーーーーッ!!!」

突然かけられた言葉に、汐は思い切り雲丹を噴き出し、その飛沫が食卓に飛び散った。それを見た玄海は「うわっ、汚ねぇなおい!」と顔をしかめながら言った。

「い、いきなり何を言い出すのよ!危うく気管に入って死ぬところだったじゃない!」
「いやいやお前もいい歳だ。そろそろ男の一人や二人捕まえてきてもいいんじゃないかって思ってな。それとも、もうめぼしい奴はいるのか?」
「いるわけないでしょ!大体あたし、生まれてから一度もこの村から外に出たことなんて・・・」

汐がそう言いかけた瞬間。突如汐の脳裏に何かが浮かんだ。

それは、緑と黒の市松模様の羽織を纏った、大きな箱を背負った少年。

(あれ?)

その少年に見覚えがあるような気がしたが、瞬きをすれば彼の姿は頭の中から消え去った。

(今の、誰だろう・・・?この村の人間じゃなかった。でも、なんでかわからないけれど、何かものすごく大切なことを忘れている気がする)

「汐?どうした?」

突然黙ってしまった汐を、玄海は心配そうな目で見つめている。汐は頭を振って「何でもない」というと、手ぬぐいで散らばった雲丹を拭き出すのだった。
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