第68章 無限列車<参>
動き続ける列車の中で眠る汐の右目からは、一筋の涙がこぼれている。彼女の前で眠る炭治郎は、両目から大粒の涙を流しながら同じように眠っている。
そんな彼らの心中など気にも留めず、五人の男女は汐達に近寄り、異形に指示されたとおりに縄を繋いでいく。
「縄で繋ぐのは腕ですか?」
「そう。注意されたこと忘れないで」
五人はそれぞれ縄をつないだ相手と同じように自分もつなぎ、そしてそのまま傍の席に座った。
汐の左手首に縄をつないだのは、汐とさほど年の変わらない少年。だが、その顔には痛々しい程の傷があり、酷い扱いを受けたことがあるように見えた。
彼はそのまま汐の隣に座り、反対側の手すりに頭を預ける。
(確か、大きくゆっくり呼吸するんだったよな。数を数えながら・・・そうすれば眠りに落ちる。いち、にい、さん・・・)
少年が数を数えていると、彼からは小さな寝息が零れだす。そして再び、列車内は車輪が線路を走る音だけになった。