第67章 無限列車<弐>
列車は速度を上げて暗闇の中を突き進む。伊之助はすっかり興奮し、窓を全開にして身を乗り出しながら声を上げた。
「うおおおおおお!すげぇ、すげぇ!速ぇぇぇ!!」
「危ない!馬鹿この・・・」
そんな伊之助を善逸が慌てて引き戻そうとするが、興奮しきっているせいか善逸を振り払いながら頭を外に出す。
「俺外に出て走るから!!どっちが速いか競争する!!」
「馬鹿にも程があるだろ!!」
とんでもないこと言いだす伊之助に、善逸は全身全霊で伊之助を引き止める。そんな二人を見て煉獄はいつ鬼が出るかわからないから危険であることを告げた。
それを聞いた瞬間、伊之助を除く全員が肩を震わせ、善逸は瞬時に顔を青ざめさせると汚い高音で喚きだした。
「《嘘でしょ!?鬼出るんですか、この汽車!?」
「出る!」
「出んのかい!!嫌ァーーーーーッ!!鬼の出る所に移動してるんじゃなくてここに出るの、嫌ァーーーーーッ!! 俺、降りる!!」
涙目になりあたふたする善逸に、煉獄は冷静な声色で状況を説明した。
短期間のうちにこの汽車で四十人以上の人が消息を絶ち、数名の隊士を送り込んだが誰一人として帰って来る者はいなかった。
「だから、柱である俺が来た!」
「はァーーーーーッ、成る程ね、降ります!!」
煉獄の説明を聞いた善逸は、ますます顔を青くし、ぎゃあぎゃあと喚き続ける。そんな善逸に対して汐は気分の悪さから動くことができずに殴りたい衝動を抑えていた。
その時だった。