第67章 無限列車<弐>
「汐!?どうしたんだ!?」
そう言えば先ほどから汐が妙に静かだと思っていたが、煉獄の声の大きさと話の興味深さですっかり失念していた。
炭治郎は慌てて汐に駆け寄ると、汐は小さな声で「き・・・もち・・・わるい・・・」とだけ答えた。
「お前っ・・・まさか、列車に酔ったのか!?船酔いはしないんじゃなかったのか!?」
「こんな、密封された・・・乗り物は・・・初めてで・・・うっ・・・!」
青白い顔でおくびをする汐に、どうしたらいいかわからず狼狽える炭治郎。
「むっ、乗り物酔いか。いかんな。溝口少年、窓を開けてもらえるか?」
炭治郎が窓を少し開けたのを確認すると、煉獄は羽織の内側から小さな袋を取り出し汐の傍に寄った。
「これは胡蝶から処方された酔い止めの丸薬だ。噛んで飲みなさい」
煉獄は汐の手に丸薬を握らせると、彼女は直ぐに口に含む。が、あまりいい味ではなかったのか思い切り顔をしかめた。
そんな汐を見て煉獄は再び何かを取り出すと、汐の前に差し出した。
「それでも我慢ができなくなったらこれを使うといい」
それは袋がいくつも重なったようなもので、おそらくその時が来たら使えということだろう。
汐は小さく礼を言うと袋を受け取り、そのまま再び背もたれに寄りかかった。