第67章 無限列車<弐>
「煉獄さん!!ちょっといい!?」
汐も負けじと声を張り上げるが、煉獄は未だにうまいと言いながら次の弁当を開けようとしている。
「煉獄さん!人の話は聞こう!!どこ見てる!?あたしたちの事ちゃんと見てる!?」
耳元で声を張り上げるも、汐の声は煉獄の声にかき消されてしまい聞いていないように見える。その態度にとうとう汐の堪忍袋の緒が切れたのか、大きく息を吸うと耳元に口を寄せ声を張り上げた。
「聞けやァァァァ!!この食いしん坊万歳ィィィ!!!」
煉獄以上の大声に善逸は勿論、炭治郎と伊之助まで耳を塞いだ。すると煉獄はようやく箸を止め、汐達の方を向いた。
「おお!君たちはあの時の。来ていたのならもっと早く声をかけてくれれば、弁当を分けていたのだが」
「さっきからずっと声をかけてたけど!?もしかして本当に聞こえてなかったのこの人!?」
汐の突っ込みに煉獄は高らかに笑い、炭治郎達は脱力したのか、疲れた顔で項垂れていた。
「それに君は青い髪の少女!確か名前は・・・」
「大海原汐」
「そうだ、大海原少女!よもや三度も君に会えるとは!今日はよき日だ」
煉獄はそう言って喜びの宿った眼で汐を見るが、汐は彼の言葉に違和感を感じた。
「三度目って、あたしたちが会ったのって柱合裁判の時だけじゃなかったっけ?」
「いや、君が胡蝶の屋敷にいた時、俺は用があって赴いたのだが、その時に裏山で歌の練習をしている君を見ているんだ」
煉獄の言葉に、汐は驚きのあまり目を剥いた。
「練習って、見てたって、ええっ!?いつ!?」
「あれはよく晴れた日で、風が心地よい日だった!」
「いやそうじゃなくて!見ていたんなら声をかけてくれればよかったのに」
「そのつもりだったのだが、あまりにも美しかったので声をかけるのを忘れていた」
そう言って煉獄はからからと笑うが、彼が放った言葉に汐の顔に一気に熱が籠った。