第66章 無限列車<壱>
人気のないところに身を隠し、落ち着いた善逸は伊之助のせいで散々な目に遭ったことを責め立てた。
それに対して伊之助は、何故警官から逃げ出さなければならないと詰め寄る。
「政府公認の組織じゃないからな、俺たち鬼殺隊。堂々と刀持って歩けないんだよ、ホントは。鬼がどうのこうの言っても、却々(なかなか)信じてもらえんし、混乱するだろ」
「一生懸命頑張っているのに」
悲しそうな顔をする炭治郎に、汐は「そう言うもんなんでしょ、お偉いさんなんて」と突っぱねるように言った。
「それよりどうすんのよ。こんなところでしょっ引かれるのは勘弁だわ」
「とりあえず、刀は背中に隠そう」
善逸の提案に汐と炭治郎は頷き、腰から刀を外して背中に隠した。が、伊之助は上半身には何も身に纏っていないため、刀が見事に丸見えだった。
「・・・丸見えじゃない」
「服着ろ馬鹿」
汐と善逸の容赦ない言葉が伊之助を穿ち、炭治郎は小さくため息をつくと持っていた大きな布で伊之助の体を覆って刀を隠した。
「ここに煉獄さんがいないってことは、もう乗り込んでいるんじゃない?」
「その可能性はありかも。よし。俺が切符を買ってくるから、お前らはそこから動くなよ?」
善逸は三人にくぎを刺すように言うと、切符を買うために走り去って行った。