第66章 無限列車<壱>
「この土地の守り神かもしれないだろう。それから、急に攻撃するのはよくない」
あまりにも真面目におかしなことを言う炭治郎に、善逸はこの上ない程の呆れ切った視線を向けた。
「いや、汽車だって言ってるじゃんか。列車。わかる?乗り物なの、人を乗せる・・・この田舎者が」
「つまり、人を乗せて陸の上を走る船のようなものね」
「その例えもどうかと思うけれど、まあこいつらよりはましかな」
汐の少しずれた例えに善逸は軽めに突っ込むも、これ以上余計なことを言って汐に殴られてはかなわないと追及はしないことにした。
「列車?じゃあ鴉が言ってたのはこれか?」
「無限って書いてあるし、そうじゃない?でも無限っていったいどういう意味なのかしら?」
炭治郎と汐が首をひねっていると、突然伊之助が徐に列車から距離をとった。
何事かと思い、目を丸くしていると、伊之助は突如声高らかに「猪突猛進!」と叫び、あろうことか頭から列車に突進した
「ちょっ、何やってんのよあんた!!」
「やめろ恥ずかしい!!」
汐と善逸が慌てて伊之助を羽交い絞めにして引きはがすと、騒ぎを聞きつけたのか駅員が警笛を鳴らしながら走ってきた。
彼等は汐達が帯刀しているのをみて、瞬時に顔色を変える。
「こ、こいつら刀持ってるぞ!警官だ、警官を呼べ!!」
「やばいっ!!あんたたち、ずらかるわよ!!」
汐は炭治郎の手を取り、善逸は伊之助をひっつかんで一目散に逃げだした。