第66章 無限列車<壱>
蝶屋敷を出る四人の前には、人一人ほどの大きさの巨大な瓢箪があった。
四人は真剣な面持ちで(伊之助は被り物を外して)瓢箪をとると、大きく息を吸い吹き出した。
「頑張れ頑張れ頑張れ!!」
三人娘たちが応援する中、四人の瓢箪に亀裂が入ったかと思うと、音を立てて砕け散った。
「やったー!!」
飛び跳ねながら喜ぶ三人娘たちは、その後おにぎりを差し入れとして汐を除く三人に差し出した。
伊之助はすぐさま手を伸ばすが、それを善逸が阻止する。そして汐には小分けにされた別のおにぎりを差し出した。
「ありがとう!あんた達には本当に世話になったわ。元気でね」
「はい!汐さんも、どうか炭治郎さんとこれからもなかよくしてくださいね」
「えぅ!?あ、うん。何とかやってみるわ」
思わぬ言葉にたじろぐ汐だが、それを見ていた伊之助が隙を見て汐に出されたおにぎりを掴んだ。
「あ、だ、駄目です伊之助さん!それは汐さん専用のおにぎりで・・・」
きよが制止するが既に遅く、伊之助はおにぎりを一気に口に押し込んだ。が、次の瞬間。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
伊之助は奇声を上げながら顔を真っ赤にし、苦しそうにのたうち回る。それもそのはず。そのおにぎりは、辛いものが大好きな汐の為に三人娘たちが作った、特製激辛明太子入りのおにぎりだったのだ。
「て、てめぇ!なんてもん喰わせ・・・」
辛さのあまりうまくしゃべれない伊之助を、汐は冷ややかに見降ろし「自業自得よ」とだけ告げた。その光景を善逸は青ざめながら見、炭治郎は慌てて伊之助に水を飲ませた。
「いっぱい鬼を倒してくださいね!皆さん、お達者で!!!」
三人娘たちの激励の声が響き、炭治郎と善逸は涙を流し、伊之助は湧き上がってくるほわほわした感情に戸惑い、そんな男どもを汐が尻を叩いて前に進ませる。
しかし汐の目にも涙が光り、別れを惜しんでいることを炭治郎は見逃さなかった。
――ありがとう、みんな。行ってきます!!