第66章 無限列車<壱>
「あ、アオイ!」
中庭に行くと、アオイは忙しそうに洗濯物を干していたが、汐の姿を見つけると思わず息をのんだ。
「な、何か御用ですか?」
いつもと違い、声を詰まらせるアオイに汐は特に気にする様子もなく口を開いた。
「あんたにきちんとお礼が言いたくて。あたしたちを支えてくれて本当にありがとう。あんたの思いはあたしたちがしっかりと持っていくから、変なこと気にするんじゃいわよ」
汐はそう言って去ろうとするが、アオイが背後から呼び止める。振り返るとアオイは少しだけ目を潤わせながら、「死なないでください」とだけ言った。
その言葉に汐は驚いて目を見開くも、次には笑顔になり「わかったわ!」とだけ答えてその場を後にした。