第66章 無限列車<壱>
「さて、さっさと準備をして出発しないと」
顔を洗って髪を整えた汐は、着替える為に部屋へ向かっていた。が、前方から足音が聞こえ誰かが来る気配がする。
汐はぶつからないように端によけたが、向かってきた者はそれでも汐の体にぶつかった。
「いたっ!ちょっとあんた!どこ見て歩いてんの?」
汐が抗議の声を上げるが、すれ違った者の背中を見て汐は息をのんだ。
そこにいたのは自分よりも五寸以上も背が高く、がっしりとした体つきの男性で、特徴的な髪形をしていた。
(あ、あいつ。もしかして最終選別の時で女の子を殴って炭治郎に腕を折られた奴だわ!?っていうかデカッ!!伊之助よりでかいんじゃない!?)
驚くほどの体格に汐が目を見張る中、彼は振り返ることなく角を曲がっていった。
無視されたことには腹が立ったが、これ以上遅くなっては時間に間に合わなくなってしまうことを危惧した汐は慌てて部屋へ戻っていった。
(あ、そうだ。部屋に行く前にアオイとカナヲに挨拶をしていこう)
汐はそう思い、踵を返して廊下を歩く。すると、縁側にたたずんでいるカナヲを見つけた。