第64章 幕間その肆:月夜の宴
「あなたが気にする必要はありませんよ。この事はカナヲに近しい一部の人しか知らないことですから。でも、あなたがカナヲのことを気にかけてくれていたことはうれしく思っています」
「気にかけたっていうか、カナヲのお陰であたし達は新しいことができるようになったから、そのお礼をしたいだけよ。でも、今の調子じゃまだまだ難しそうね」
うーんと首をひねる汐に、しのぶは汐の優しさを感じた。口は悪いがとても心の優しい少女だということを、彼女は改めて認識した。
「さて、もう夜も遅いですしお休みになってはどうですか?それとも、眠れないなら私の手伝いをしますか?」
「・・・寝ます。おやすみなさい」
しのぶからただならぬ気配を感じた汐は、そそくさとその場を後にする。姿が見えなくなったのを確認したしのぶは、窓から見える月を仰ぎ見た。
(何故でしょう。カナヲのことを誰かに話したことなど、今までほとんどなかったのに。やはり彼女は只者ではないようですね)
自分の変化に戸惑いつつも、しのぶは他に起きている不届き物がいないか見まわるため、その場を静かに去るのだった。