• テキストサイズ

【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第8章 慈しみと殺意の間<弐>


そしてその後、汐は鱗滝と炭治郎両名の前で海の呼吸を披露することになった。

以前玄海が言っていたが、海の呼吸というのは玄海自らが生み出した独自の呼吸法で、まだまだ未完成のものだ。それ故鱗滝もどのようなものかはあまりよく把握しておらず、一度見てみたいというのがその意図だ。

目の前には刀を振るう鍛錬のために用意された巻き藁がある。それを型を使いすべて切り落とせというのが今回の課題だ。
二人は下がり、その場には汐だけが残る。汐は右わきに指してある刀を抜くと、大きく息を吸った。

低い、地鳴りのような音が響き、炭治郎が目を見開く。

――全集中・海の呼吸――
――壱ノ型 潮飛沫(しおしぶき)!!

汐が目にもとまらぬ速さで巻き藁との距離を詰め、一気に切り裂く。そのまま彼女は方向を変え、再び息を吸った。

――弐ノ型 波の綾!!

今度は先ほどとは異なり、緩やかな動きで巻き藁の間を泳ぐように動く。そしてそのまま、すれ違いざまに巻き藁を切っていく。
その鮮やかな動きに、炭治郎は縫い付けられたように動けなくなっていた。

「なるほど、相分かった」
その時、鱗滝が突如口を開いた。汐はこれから別の型を出そうと身構えていたのだが、急にそれを中断されよろめく。

「確かにお前は海の呼吸なるものを扱えるようだ。だが、完全に使いこなせているといえばまったくもってそうではない」
「え!?」
「お前は刀を握ってまだ浅いだろう。太刀筋にかなりの粗さが見える。玄海は、お前に刀を用いた訓練をしなかったのではないか?」

その言葉が、汐の心を深く打ち抜いた。まさしくその通りだった。たった短時間でここまで見抜いてしまうとは、やはり彼は只者ではなかった。
汐の沈黙に肯定の意味を感じた鱗滝は、深く深くため息をついた。

「あやつめ。肝心なことを省く癖は治っておらんかったようだな。それで苦労をするものがいるとなぜわからんのか」
鱗滝は独り言のようにつぶやくと、これからは炭治郎同様に修行をつけると改めて宣言したのであった。
/ 1491ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp