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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第60章 兆し<肆>


「いやぁ、流石無惨様。なかなかに面白い見世物だったね、ねえ猗窩座(あかざ)殿。」

どこかの空間で一人の青年の鬼が愉快気に語ると、猗窩座と呼ばれた男の鬼は不機嫌そうに顔をゆがめていった。

「黙れ。近寄るな。そもそも弱い奴に存在する価値はない」

それだけを言うと彼はそのままどこかへと去って行った。そんな猗窩座に、青年の鬼は特に気にするそぶりもなくへらへらと笑う。

「ありゃ、俺も嫌われたものだね。まあ別にいいけど。それよりも黒死牟(こくしぼう)殿。この前無惨様がおっしゃってた【ワダツミの子】っていったい何なんだい?」

青年の鬼は、陰に隠れるようにして佇む鬼に声をかけた。黒死牟と呼ばれた鬼は振り返ることなく口を開いた。

「ワダツミの子・・・人や鬼に・・・作用する・・・声を持つ青髪の・・・娘だ。私が嘗ていた時代でも・・・ワダツミの子は存在した」

「へぇ、声に不思議な力を持つ女の子か。面白いね。それはまるで人間じゃなくて鬼に近いと思わないかい?」

「だが・・・奴らは日の下を歩くことができ・・・致命傷を負えば死に至る・・・なんとも脆い存在だ。ずっと昔から・・・また・・・生まれたのか・・・」

彼は何かを思い出すかのように目を細めると、そのまま闇の中へ消えていく。その仕草に青年の鬼はほんの少しだけ気にはなったが、すぐにどうでもいいと思ってしまう。

「さて、俺はどうしようかな。これからやること、あったっけ?」

まるで緊張感のないその風貌は、かえって恐ろしさを助長させる。その彼の目には『上弦・弐』とはっきり刻まれていた。
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