第60章 兆し<肆>
固まる炭治郎と呆然とするカナヲ。一瞬の沈黙が辺りを支配したが・・・
「かっ・・・勝ったぁーー!!」
「勝ったのかな?」
「かけるのも置くのも同じだよ」
「やったわね炭治郎!!あんたもすごいじゃない!!」
見事カナヲに勝利を収めた炭治郎は、汐達と手を取り合って喜びの舞を舞う。
「はいはーい!!次はあたしの番!今日も負けないわよ―っ!!」
炭治郎に負けたことが引き金になったのか、汐の前に座るカナヲに笑顔はない。それが彼女が本気であることが見て取れた。
(今までとは違う目つき。カナヲも本気になったみたいね。でも、あたしだって負けない!!)
そして始まる汐とカナヲの訓練は、昨日よりも激しさを増していて炭治郎ですら唖然となるほどだった。そしてなんと、汐は10戦中6回の勝利をおさめ、確実に強くなっていることを実感した。
そんな様子を善逸と伊之助は顔を引き攣らせながら見ていた。
このままじゃ不味いと感じた二人は、以前よりも負荷を増やした修行を開始した。汐、炭治郎の二人がカナヲに勝利を収めたことに焦り、そしてやる気を燃やしたのだ。
(うぉおおおお!!)
(負けねぇええええ!!!)
二人の気合に満ちた声が響き、蝶屋敷はこれ以上ない程騒がしくなるのであった。
そして二人が天賦の才能を持っているせいなのか。汐と炭治郎が何日もかかった全集中・常中を、僅か十日ほどで習得してしまうことになるとはだれも知らなかった。