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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第59章 兆し<参>


その夜。汐は高熱を出してしまい、部屋で寝込んでしまっていた。

今までの疲れがカナヲに勝てたことで噴き出したのか。炭治郎に抱きしめられたのが原因か。将又その両方か。

汐は赤い顔で額に手ぬぐいを乗せながら眠っていた。

そんな中、部屋の扉を軽くたたく音がした。そして音を立てないように炭治郎がそっと入ってくる。

手には水の入った桶と新しい手ぬぐいがあった。

「汐、大丈夫か?」

炭治郎が声をかけるが、眠っている汐は答えない。彼はそっと彼女の眠るベッドに近寄り、額に乗せられていた手ぬぐいをとり水につけて固く絞る。

それから再び汐の額に乗せると、もう一枚の手ぬぐいで汗を拭いた。

眠る汐を見て、炭治郎は昔のことを思い出していた。汐が狭霧山に来て初めての冬。雪を見たことがなかった彼女が子供の様にはしゃいで熱を出してしまったことを思い出したのだ。

あの時も今と同じように炭治郎が汐の看病をし、無理がたたってか炭治郎まで倒れてしまい鱗滝に迷惑をかけてしまったことがあった。

あの日からどれくらいが経ったのか分からない。けれど、思い出すと酷く懐かしく思える。そして今こうして汐と自分が生きていることが、本当にありがたく思えた。

「やったな汐。カナヲに勝つなんて、本当にすごいよ。俺も頑張らないとな」

炭治郎はそう呟いて汐の頬にそっと触れた。炭治郎にとっては平熱ほどの体温でも、平熱が低い汐にとっては動けない程の高熱になってしまうことがある。

少し心配そうな顔をする炭治郎。すると、汐は小さくうめくと口を開いた。

汐の口から歌が零れだす。おそらく熱に浮かされた寝言のようなものだろうが、炭治郎は夢の中でまで歌う汐に困ったような笑みを浮かべた。

(ん?あれ?この歌、いつもと何か違うような・・・)

汐が奏でている歌は、何度も歌っていた故郷のわらべ歌で間違いはない。だが、今まで炭治郎が聞いてきた歌詞とは異なっていた。
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