第59章 兆し<参>
一瞬の沈黙が辺りを支配した後。
「か、勝ったぁアアアア!!!」
汐が喜びの声を上げると、三人娘たちは抱き合って喜ぶ。炭治郎は身体を震わせると、歓声を上げながら汐の元に走り寄ってきた。
「汐――ッ!!」
そしてそのまま汐に飛びつき、固く抱きしめた。ひゅっと汐の喉から息が漏れる。
「すごい、すごいぞ汐!カナヲに勝つなんて、やっぱりお前はすごい奴だ!!やったな!!」
息が止まりそうなほど強く強く抱きしめられ、汐の血圧と体温が急激に上がる。そんな彼女に気づくことなく、炭治郎はひたすら抱きしめていた。
が、汐の様子に気づいたすみが、慌てて炭治郎の名を呼ぶ。
「た、炭治郎さん!汐さんが・・・!!」
「え?」
炭治郎は腕の力を緩めながら汐を見ると、汐は全身をゆでだこの如く真っ赤にさせながら目を回して気絶していた。
「うわぁーっ、汐大丈夫か!?しっかりしろ!!」
炭治郎がいくら揺さぶっても、汐はぐったりしたまま動かない。慌てる炭治郎に、きよが汐の部屋まで走り、なほとすみはしのぶを呼びに走っていった。
炭治郎はそのまま汐を横抱きに抱えると、慌てて訓練場を飛び出していった。
一人残されたカナヲは呆然と、皆が去った方向を見つめていた。