第59章 兆し<参>
― おおなみこなみ みだれゆく
つきたてらるは さめのきば
いさりびともり うみなれば
わだつみおどり うみはたつ
ああひびけ ああとどけ
おもひつたうは しおのうた ―
そう言えば、と炭治郎は汐の歌を聴いて思い出したことがあった。
(汐がよく歌っていた歌の歌詞。よく考えてみれば汐の海の呼吸の型の名前と歌詞が似ているような・・・)
海の呼吸と海の女神を沈めるわらべ歌。二つが関係しているかは炭治郎にはわからないが、少なくとも無関係ではないことだけは確かだった。
(ワダツミの子・・・鬼舞辻無惨が恐れている力・・・。少なくともあいつは汐のことを絶対に狙ってくるだろう)
炭治郎は拳をグッと握りしめた。自分の大切な人をこれ以上、失うわけにはいかない。小さな決意の炎が彼の中に宿った。
「お休み、汐。俺、もっともっと強くなって禰豆子とお前を必ず守るから。だから――」
――これからも俺を見ていてくれ
炭治郎の言葉に汐は答えないが、心なしか汐の表情は和らいでいるように見えた。それを見届けた炭治郎は。そっと部屋を後にした。