第59章 兆し<参>
全員の口から声にならない悲鳴が上がり、あたりは一瞬で騒がしくなる。そんな喧騒をものともせず、伊之助は刃こぼれした刀を満足そうに見つめた。
「ぶっ殺してやるこの糞餓鬼!!オイゴルァ!!何晒しとんじゃいコラァ!!」
先ほどまでの紳士的な態度は何処へやら、鉄穴森は激高し伊之助につかみかかろうとする。それを汐と炭治郎が必死で抑えた。
しかし伊之助は構うことなく、二本目の刀にも躊躇いもなく石を穿っていく。
「テンメェーッ!!もう生かしちゃ置けねえ!!〇×※□★くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
「すみません!すみません!!」
最後の方は殆ど言葉になっておらず、ひたすら伊之助を罵倒し続ける彼を、二人は必死で抑えた。
そして帰り際も「ないわー、あいつないわー!!刀を石で?ないわぁーー!!」と鉄穴森はぼやきながら鋼鐵塚と鉄火場と共に帰っていった。
そしてその夜。
しのぶはそっと汐のいる部屋の扉を開けて中を覗き込んだ。すると、眠っている汐の口からは、低い地鳴りのような全集中の呼吸の音が響いている。
それを見ると彼女は満足そうな顔で、そっとその場を後にした。