第59章 兆し<参>
それから数日後。
山で発声練習をしていた汐の元にソラノタユウが飛んできた。彼女の言葉に汐は驚いたように目を見開くと、すぐさま練習を中断し山を下りた。
「炭治郎!伊之助!!もうすぐ打ち直されたあたしたちの刀が届くそうよ!!」
扉を突き破るような勢いで、汐は訓練場に転がり込んだ。すると炭治郎と伊之助の表情が瞬時に興奮したものへと変化した。
その時、炭治郎の鼻が外からの匂いを探知するように動く。
「鋼鐵塚さんと鉄火場さんの匂いだ!」
三人はウキウキしながら屋敷の外に出てあたりを見回す。すると遠くの方に三つの人影があることに気づいた。
一人は見覚えがないが、あとの二人には見覚えがあった。江戸風鈴を傘にぶら下げた鋼鐵塚と、南部風鈴を傘にぶら下げた鉄火場。
「おーい、おーい!!鋼鐵塚さーん!!御無沙汰してまーす!」
炭治郎は大きく手を振って鋼鐵塚へ声をかける。すると炭治郎に気づいた鋼鐵塚は、荷物を隣にいたもう一人の刀匠に押し付けると、そのまま一人こちらへと走ってきた。
「お元気でした・・・か?」
走ってくる彼を見て、炭治郎の声が急速にしぼむ。それもそのはず。鋼鐵塚の手には一本の出刃包丁が握られており、そのまま殺意を込めて炭治郎に突進してきたのだ。
炭治郎は慌ててそれを躱し、怯えた様子で鋼鐵塚の名を呼ぶ。その殺気に当てられたのか、汐は勿論伊之助も鳥肌が立った。