第59章 兆し<参>
「善逸、伊之助」
出て行こうとする二人に声をかけると、二人は怪訝そうな顔で汐を見る。そんな二人に汐はにっこりとほほ笑み
「ありがとう」と、告げた。
その言葉に二人の心臓が跳ね上がり、顔に一気に熱が籠る。善逸は「い、いやいや。俺には禰豆子ちゃんという心に決めた人が・・・」と呟き、伊之助は何故顔が熱くなったのか理解できないでいた。
そんな奇妙な集団を、しのぶはほほえましそうに見つめていたのだった。
こうして二人だけだった基礎訓練に、善逸と伊之助が加わりあたりは一層にぎやかになった。
四人が一生懸命に訓練をしている様子を、カナヲは遠くから不思議そうに眺めていた。
「カナヲも同期なんだから、一緒にどう?」
そんなカナヲにしのぶは微笑みながら声をかけると、カナヲは張り付けたような笑顔を見せながら一礼し、その場を去った。