第7章 慈しみと殺意の間<壱>
「と、とにかく次は服を着替えさせないと・・・」
鱗滝が用意してくれた新たな着物に着替えさせようと、炭治郎は袂に手を伸ばす。勝手に服を着替えさせることには多少抵抗があったものの、彼は心の中で謝りながら着物を脱がしていく。
すると、汐の胸元に白い布が幾重にもまかれているのが見えた。はじめは包帯だと思い見逃した傷があったかと焦った炭治郎だったが、よく見るとそれはわずかながら緩んでいる。そしてその隙間からは・・・
「!!!」
それを見て炭治郎の体は、一瞬で石のように固まる。そして、
「わああああああ!!!」
今度は顔を真っ赤にしながら、あわてて着物の袂を閉じた。そして眠っている汐の顔を何度も見る。
(おっ、女っ・・・女の子!?い、いやいやいや。鱗滝さんからは新たに迎える人がいるといわれたけれど、性別は詳しく聞かなかったけど、まさか、まさか本当に・・・!?)
「炭治郎。何をしている?」
背後から不意に声をかけられ、炭治郎の体が大きく跳ねる。振り返ると、鱗滝が(おそらく)怪訝そうな表情でこちらを見ていた。
だが、耳まで顔を真っ赤に染めた炭治郎と、着替えの途中であろう着衣の乱れた汐を見て、鱗滝は全てを察した。
それから固まったままの炭治郎に自分が着替えさせると告げ、彼には食事の支度を変わるように命じる。あわててその場を後にする炭治郎を見送ってから、鱗滝は眠っている汐に目を向けた。
そして。
「あいつめ・・・」
そう小さくつぶやいてから、鱗滝はせっせと汐の着替えを済ませるのだった。