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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第59章 兆し<参>


そんな彼女に、善逸は笑みを浮かべながら口を開く。

「俺、初めて汐ちゃんの声を聞いたときに思ったんだ。この人は本当に【人】なのかって。ああ、変な意味じゃないよ!君の声を聞いていると不思議と怖い気持ちが和らいだり、勇気が出てきた気がしてたんだ。でも、今の話を聞いていて納得したよ」

善逸の言葉に、汐は呆然としながら彼を見つめた。

「確かに人や鬼に影響を及ぼす声なんて普通じゃありえないんだろうけど、俺だって耳がよすぎて気味悪がられたことが何回もあるんだ。だから俺は君の声を気味悪いなんて思わないし、君が正しくその力を使うって信じてる」

「善逸・・・」

ほほ笑む善逸に、汐は恥ずかしいのか目を伏せる。そんな二人をほほえましく見る炭治郎。

しかしそんな空気を壊すような声が、あたりに響いた。

「つまり、なんだ?どういうことなんだ?」

汐の話を理解していなかった伊之助が、善逸に言葉を投げかける。善逸は呆れたように頭を振ると、めんどくさそうに答えた。

「だから。汐ちゃんの声には俺達を元気づけたり、鬼を弱らせる力があるの。そんなことができる女の子をワダツミの子って呼ぶんだよ」

「はあ?なんでそんなことができるんだよ?」

善逸の説明で理解した伊之助が、汐に詰め寄る。そんな彼に汐は「知らないわよ!あたしだって結構後から知ったんだから」と答えた。

すると伊之助は特に驚きもせず「ふーん」とだけ言って立ち上がった。

「おい。ふーんってなんだよ。汐ちゃんが勇気を出して俺達に話してくれたんだぞ。他にいうこととかないわけ?」

善逸が咎めるように言うと、伊之助は不思議そうに首をかしげながら言った。

「他にってなんだよ?別にねぇよ。だってよくわかんねーし、それって何か悪いことなのか?」
「え?」

伊之助の問いかけに汐は思わず声を上げた。彼の言う通り、言われてみればワダツミの子であることを恥じる理由が特に思いつかないのだ。

「別にお前が何者だろうが、俺には関係ねえからな。それよりもさっさとさっきの全集中なんとかを俺は早くやりてえんだよ!」

そう言って伊之助は外に出ようとし、それを慌てて善逸が追いかける。伊之助の言葉は至極単純だったが、汐が無意識のうちに作っていた彼等との壁を壊すには十分なものだった。
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