第58章 兆し<弐>
翌日。
二人の前には小さな瓢箪が二つあった。かつて話してくれた、カナヲが稽古の時に吹いて破裂させていた強度の高い特性の瓢箪で、三人娘が二人の為に用意してくれたものだった。
二人はそれを手にし、目配せをすると大きく息を吸い瓢箪を吹きだした。
「頑張れ、頑張れ!頑張れ!!」
三人の応援が木霊し、汐と炭治郎は必死で瓢箪を吹き続ける。そして、瓢箪にひびが入ったかと思うと乾いた音を立てて二人の瓢箪が砕けた。
「「わ、割れたアアアーーッ!!」」
あの硬い瓢箪を割ることができた二人は、手を取り合って喜ぶ。だが、炭治郎は汐の瓢箪を見てぎょっとした。
汐の瓢箪は割れるどころかほとんと粉々で、形を保っている自分の物と比べてもその破損具合は明白だった。
(初めて組手をした時もそうだったけれど、やっぱり汐はすごいな。よし、俺ももっと頑張ろう!!)
「あとはこの大きい瓢箪だけですね」
なほが持ってきた人一人ほどの大きさの瓢箪を見て、二人は顔を合わせてうなずく。明るい笑い声が響くその空間を、善逸と伊之助は焦燥感を顔に出しながら見ていた。