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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第55章 迷走<参>


「炭治郎の馬鹿ァァァァ!!!ついでにあたしの馬鹿ァァァァ!!!!」

汐の空気を震わせる大声は、水の落ちる音に溶けて消えていく。一通り叫んで荒くなった呼吸を整えながら、汐は滝つぼをじっと見つめた。

そしてそのまま、何のためらいもなく飛び込む。大きなものが水に落ちる音が辺りに響いた。

水に潜って上を見上げれば、波紋で歪んだ空が見える。その少し歪な風景を眺めながら、汐はそっと目を閉じた。

(わかってる。わかってるのよ。炭治郎は少しも悪くない。あたしが勝手に騒いで、勝手に苛立ってるだけ。あんなことを言うつもりなんてなかった。でも、もう今更どうしようもないわよね)

汐の脳裏に、怒りと悲しみを孕んだ眼を自分に向ける炭治郎の姿がよみがえる。自分が悪いことはわかっているのに、どうしても素直になれない自分が嫌で嫌で仕方がなかった。

そんな気持ちを冷やしたくて水に潜ってみたものの、やはり炭治郎の顔がちらついて仕方がない。いっそのことこのまま彼を忘れてしまえばいいなと思い始めたその時。

不意に、汐の視界に何かが割り込んできた。

それは桃色と緑色の不可思議な色で、人のようにも見えた。
その人は汐の姿を見つけるなり、思い切り顔を引き攣らせた後、思わず二度見をしてしまうような程顔を崩して何かを叫び出した。

そしてそのまま、腕を突っ込み汐の手を掴むと思い切り引き上げる。

水圧と急激に肺に入ってきた空気に汐がむせていると、背中に衝撃が走った。
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