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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第7章 慈しみと殺意の間<壱>


(ああ、この子は駄目だ。殺意が強すぎて、周りはおろか自分自身すら滅ぼしかねない。彼とは真逆の、破滅の匂いがする。玄海、義勇。この子には・・・)

だが、それでも汐の迷いのない瞳に、鱗滝の心は動いた。何よりも、玄海との約束もある。そして小さく「儂に着いて来い」というと、汐を待たずに歩き出した。

否、それは歩くというよりはもはや走るといっても過言ではなかった。しかもその速さは壮年の者とはとても思えない。
しかしそれでも汐はついていった。自分の師、玄海の地獄のような特訓に比べたらなんてことはない。実際に二人の距離は二尺ほどしか離れていない。

(やはり、玄海の弟子というのは偽りではなかったか)

さっきまで倒れていたばかりの人間とは思えない身体能力に、鱗滝は心の奥で納得していた。

やがて鱗滝は自分が住んでいる小屋の前まで汐を連れてきた。そして荷物を置くと、今度は山に登ると言い出した。
(え?今から山に登るの?あたし、生まれてこの方山登りなんてしたことないんだけど)

苦虫をかみつぶしたような顔をする汐をしり目に、鱗滝はどんどん山へと入っていく。悪路に足を取られながらも、汐は必死にその背中に食らいつく。
そして山の中腹に差し掛かった時、彼は振り返りこう告げた。

「ここから麓の山まで下りて来い。時間は問わない」
それだけを告げると、彼の姿は煙のように消えてしまった。
残された汐は、呆然と彼が消えた方角を見つめていた。
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