第55章 迷走<参>
翌朝。
「汐、お前昨日の夜はどうしたんだ?ずっと待っていたんだぞ?」
訓練場に姿を現した汐に、炭治郎は心配そうに声をかける。すると汐は、少し疲れた顔で炭治郎を見て言った。
「急に体調が悪くなっちゃったみたいで。待っていたのにごめんね」
ぎこちなく笑う彼女からは嘘の匂いはしなかったが、炭治郎は汐に微かな違和感を感じた。何があったのか聞こうとしたが、アオイが訓練を始めると声を上げたためその時は断念した。
だが、その日の汐の動きは機能に比べて明らかに悪かった。それどころか、どこか上の空にも見えた。
「どうしたんですか汐さん!昨日より動きが悪くなっているじゃないですか!!」
その日はなんとアオイにまで負けてしまい、彼女が思わず声を上げる程だった。
「・・・ごめん」
汐は反論することもなくアオイに謝罪の言葉を口にする。こんなに静かな汐を見るのが初めてな三人娘は、心配そうに彼女を見つめる。
「汐。お前どうしたんだ?今朝から様子がおかしいけど、何かあったのか?」
炭治郎がそう言って汐の肩に触れようとした時だった。
「触んないでよッ!!」
汐は大声を上げて炭治郎の手を思い切り振り払う。乾いた音が訓練場に響き、カナヲと汐以外の全員が驚いて息をのんだ。
「汐・・・!?」
炭治郎は驚いた表情で汐を見る。彼女から発せられる苛立ちと敵意の匂いが隠れもせず炭治郎の鼻を刺激し、思わず声が震えた。
汐ははっとした表情をすると、そのまま炭治郎を押しのけ訓練場から飛び出してしまった。