第54章 迷走<弐>
「ふぅ、少し遅くなっちゃった」
その夜、風呂から上がった汐は炭治郎と共に瞑想を行う約束をしていた。
あの日から十五日後。かなり体力と感覚は戻って来た。後は瞑想して集中力を上げる。全集中の呼吸を長くづつける為に必要なことだ。
それは汐が狭霧山で修行をしたとき、師である鱗滝が言っていた言葉だった。
(そういえば、あたしたち刀折っちゃったから鋼鐵塚さんと鉄火場さん、怒ってるんだろうな)
汐の脳裏に包丁を持ち殺気を放つ鋼鐵塚と、恐ろしい程の陰気を放っていた鉄火場の姿がよみがえる。
(もうあんな思いはしたくないし、負けっぱなしもいや。さて、早く炭治郎の所へ行こう)
汐は屋敷の外へでて炭治郎を捜した。確か屋根の上で瞑想をしているって言ってたっけ・・・
そう思って上を見上げた汐の目には炭治郎と――
彼に寄り添うようにして座る、胡蝶しのぶの姿が映った。