第54章 迷走<弐>
「炭治郎さん、汐さん!」
二人が組手を終えて一息ついていると、三人娘がおにぎりをもってやってくるのが見えた。
「お二人ともお疲れ様です」
「そろそろ休憩してはどうでしょうか?」
なほとすみがそういうと、二人は顔を見合わせうなずいた。その瞬間二人の腹の虫が同時に鳴き、思わず笑ってしまった。
「瓢箪を吹く?」
おにぎりを食しながら二人は三人娘の話を黙って聞いていた。二人の前には小さな瓢箪が置いてあり、彼女たちはその説明をしているのだ。
「そうです。カナヲさんに稽古をつける時、しのぶ様はよく瓢箪を吹かせていました」
「へえ面白い稽古ね。音が鳴ったりするの?」
汐が訪ねると、きよは首を横に振って言った。
「いいえ。吹いて瓢箪を破裂させていました」
「へぇーっ・・・」
二人は笑いながらおにぎりにかぶりついていたが、その手を思わず止めた。
(え?ちょっと待って?この子今なんて言った?破裂、とか言ってた?)
思わず白目をむく二人に、きよはうなずく。汐は瓢箪を手に取って軽くたたいてみた。
こんこんという音がし、しかもかなり硬いようだ。
「これを?この硬いのを?」
「はい、しかもこの瓢箪は特殊ですから、通常の瓢箪よりも硬いです」
驚きのあまり二人の表情が石のように固まった。自分より小さく華奢な少女がそのような芸当ができるとは到底信じられない。
しかし彼女たちの眼は嘘をついているものではなかったため、真実なのだろう。
「そして、だんだんと瓢箪を大きくしていくみたいです。今、カナヲさんが破裂させている瓢箪は、この瓢箪です」
そう言って彼女たちが持ってきたのは、人間一人とそう変わらない程の巨大な瓢箪。
(でかっ!!でかすぎない!?人間一人分くらいあるわよ!?)
(頑張ろう!!)
まだまだ先は長そうな道のりに、二人は顔を引き攣らせたままうなずきあうのだった。