第54章 迷走<弐>
翌日。
汐と炭治郎は全集中・常中を習得すべく修行に励んだ。今のままではカナヲに勝つことは絶対に不可能だと分かったからだ。
だが、
「ぜんっぜんできない!!」
「ヴォエエッ」
「おわっ!大丈夫か汐!吐きそうになるまではするなよ」
それは思っていたよりもはるかに苛酷で、二人は同時に地面にへたり込んだ。
「なんなのよこれ!こんなアホみたいにつらいこと本当にできんの!?人間やめなきゃダメなんじゃないの!?」
「落ち着け汐!気持ちは痛いほどわかる!だけどとにかく落ち着け!」
そういう炭治郎も涙目になっており、全く説得力がない。そんな彼を見て汐は自分の不甲斐なさに頭を抱えた。
「っていうか、そもそもあたしたち、今まで全集中を長く続けようなんて思ったことないから体が適応していないのかも。海に潜るときも、体が適応するまでいきなり深く潜ったりはしないように」
「それだ!きっと俺達は肺が貧弱だから呼吸がうまくできないんだ。鍛えなおそう汐!そうすればきっとできるようになる!!」
炭治郎は澄み切った眼で汐を見つめた。その眼に見つめられると、不思議とやる気がわいてきた。
「そうね。このまま負けっぱなしでいたくないもの。その提案、乗ったわ!」
汐はそう言って炭治郎と拳を合わせる。そんな二人を三人娘は、優しげな瞳で見つめた。