第54章 迷走<弐>
ワダツミの子。青い髪を持つ女性で、人や鬼に影響を与える声を持つもの。汐以外にもかつてワダツミの子は何人か存在した。
ある時は神として崇められ、ある時は異端として迫害され、またある時は女であるため欲望のはけ口にされ、その力を悪用する者達もいたという。
そのためワダツミの子の本能として人の目から自分の存在を逸らすという特性が備わり、汐が男に間違われるのは、その名残であると語った。
「だが、あくまでもそのように見えるだけであって、一部の奴らにはお前が女だってわかる奴らはいる。まあだからと言って今となっては大した意味もないだろうからな。じゃ、あとは勝手にしろよ」
それだけを言って宇髄は煙のように消えてしまった。まるで嵐のような彼に頭痛を覚えながらも、有力な情報は得られた。
「あたしが男に間違われるのは、ワダツミの子の特性の名残・・・そうまでしなければならないなんて、ワダツミの子っていったい何なのよ・・・」
汐は先ほど宇髄にもらった首輪を見つめた。見た目は思ったより質素で、派手好きそうな彼が作ったとは思えない。
けれどこれを付ければあのようなことを起こせずに済む・・・
汐は首輪の留め具を外して自分の首に巻き、留め具を付けたその瞬間だった。