第54章 迷走<弐>
(う~ん、一体あの事あたしたちの何が違うのかしら。年もそんなに変わらない、ましてや同じ最終選別で生き残った同期なのに、なんでこんなに差があるんだろう)
汐は目を閉じ、もう一度考えてみる。自分と対戦した時と、炭治郎と対戦した時の様子を思い出してみた。
まず、反射速度が汐達とは比べ物にならない程速い。おそらく、汐達が万全でも勝つことは難しいだろう。
「・・・おい」
次にカナヲの眼から感じる気配が柱に近しい。相当な場数を踏んだ歴戦の剣士のような眼をしていた。
「おい。聞いてんのか」
そして最後に、汐が初めてカナヲと対戦した時に気になっていたこと。それがやっとわかった。カナヲは目がとんでもなくいいのだ。おそらく、汐達の動きなどゆっくりに見えているだろう。
「おいこら、いい加減に気づけ」
(だとしたらあたしは・・・)
「いい加減に返事くらいしろ!騒音娘」
「だあーっうるさいわね!いったい何なのよっ・・・」
耳元で何度も呼ばれた汐は、腹立たしさもあり思わず声を荒げた。だが、目の前に立つ六尺を超えた大男に目が点になる。
そこにいたのは柱合裁判時に見た、派手目の化粧をし派手な装飾品を身に着けた柱の一人。宇髄天元がそこに立っていた。
汐はしばらく呆然と彼を見ていたが、突然金切り声を上げて叫んだ。
「不審者ァァァアア!!誰かァァ!来てェェ!!」
「うるせえよ。騒音をまき散らすんじゃねえ」
宇髄はすぐさま汐の口を塞ぐと、音もなくその場を後にする。そして人気のないところへ連れていくと、彼は汐を解放した。