第54章 迷走<弐>
(うっぎぃいい!!!なんで勝てないのよぉー!)
薬湯の悪臭を漂わせながら自室へ戻った汐は、悔しさのあまり地団太を踏んだ。あれからもう何日たつのか分からない。
いい加減、汐の精神力は限界に近づいていた。
(もうこうなったらいっそのこと、ウタカタを使って動きを止めて・・・)
そこまで考えた汐は慌てて首を横に振った。
(何を考えてるのよ。それじゃイカサマじゃない。命の危機とクズを潰す時以外はイカサマを使うなっておやっさん言ってたじゃないの!)
汐は両手で頬を打ち鳴らし、冷静に考えてみることにした。考えることは苦手だが、このまま黙って負け続けていいはずがない。
そして一つのある考えが浮かんだ。
(あたし、カナヲって子の事何も知らないんだわ。相手に勝つにはまず相手を知らなければいけない。おやっさんよく言ってたっけ)
それから汐は打倒カナヲを目指し、彼女を徹底的に調べることにした。だが、尾行してもあっという間に撒かれてしまうためそれは早々にあきらめた。
そしてたどり着いた方法は、真正面から堂々と聞いてみることだった。