第53章 迷走<壱>
善逸は炭治郎と伊之助を引きずり出すと、地面に投げ捨て自分はその前に仁王立ちになって叫んだ。
「正座しろ正座ァ!!この馬鹿野郎共がァ!!」
「なんダトテメエ・・・」
あまりの扱いに憤慨した伊之助が口を開くが、善逸の右拳が伊之助の左頬を穿った。
伊之助はその勢いのまま吹き飛ばされ、建物の壁に叩きつけられる。
「伊之助ェ!!」
吹き飛ばされてうずくまる伊之助に炭治郎は慌てて駆け寄る。そして善逸に向かって「なんてことをするんだ善逸!伊之助に謝れ!!」と叫んだ。
だが、
「あ゛あ゛!?お前が謝れ!!お前らが詫びれ!!天国にいたのに、地獄にいたような顔してんじゃねぇぇぇぇえ!!女の子と毎日キャッキャキャッキャしてただけのくせに、何をやつれた顔してみせたんだよ!!土下座して謝れよ、切腹しろぉ!!」
善逸は目を血走らせ、おかしな動きで早口でまくし立てる。
しかしあのような大変な訓練を馬鹿にされた上に切腹などどいう物騒な単語が出たからには、炭治郎も黙ってはいられなかった。
「なんてことを言うんだ!!」
「黙れこの堅物デコ真面目がぁ!!黙って聞けいいかァ!?」
炭治郎の怒声を遮ると、善逸は炭治郎の髪の毛を鷲掴みにしながら唾を飛ばしてまくし立てた。
「女の子に触れるんだぞ!体揉んでもらえて!!湯飲みで遊んでる時は手を!!鬼ごっこの時は体触れるだろうがァァァ!!女の子一人につき、おっぱい二つ、お尻二つ、太もも二つついてんだよ!!すれ違えばいい匂いするし、見てるだけでも楽しいじゃろがい!!うきゃあー幸せ!!うぉああ幸せ―!!」
善逸は飛び上がり、怪我をしていたとは思えない奇妙な舞を披露する。
そんな善逸に炭治郎は呆れ果て、伊之助に至っては殴られた腹立たしさを善逸にぶつけるように声を荒げた。